開催趣旨

Prof. Hamada

本大会は平成24年(2012年)から生命医薬情報学連合大会として開催されてきました。記念すべき第10回目となる令和3年(2021年)の本会は、昨年に引き続き、日本バイオインフォマティクス学会、日本オミックス医学会の共催で開催いたします。2021年は、新型コロナウイルスに対する安全面に配慮し、早い段階でのオンライン開催を決定いたしました。今後、オンライン開催の良さを最大限活かした学会企画を行っていく予定となっております。

近年の生命科学研究においては、シークエンサーや質量分析器などの測定技術・機器が 急速な進歩を遂げており、これらの機器を活用してさまざまな種類の生命科学の『情報』 (オミックス情報)が取得され蓄積されてきています。具体的には、セントラルドグマを構成する、ゲノム(DNA)、トランスクリプトーム(RNA)、プロテオーム(タンパク質) のみならずに、エピゲノム、ヌクレオーム、エピトランスクリプトーム、ストラクチュローム、メタボロームなどの新しいタイプの網羅的計測データの取得も進んでいます。さらに、個体差、シングルセル、時空間などを考慮した解析なども可能になり、データの巨大化・多様化・複雑化に拍車がかかっています。その結果、現在の生命科学研究においては、従来の「仮説駆動型」の研究に加えて、これらの複雑化するオミックス情報と分化や疾患などのさまざまな生命現象との間の関連性を網羅的かつ俯瞰的に見出していく、「データ駆動型」の研究が重要となってきています。しかしながら、データ駆動型の生命科学研究は、現時点では十分に達成しているとは言い難く、基盤的な情報技術開発も含めてさらに 多くの研究開発を行っていくことが必要となっています。

さらに、医薬学研究に目を向けると、現在の薬の主流である低分子化合物をターゲットにした創薬研究においては、人工知能(AI)の技術と創薬を融合させた「AI 創薬」が活発 に研究されています。その一方で、低分子化合物創薬の限界も囁かれるようになっており、核酸医薬・抗体医薬などの、低分子化合物に替わる新しい創薬モダリティも出現してきています。また、創薬のターゲット分子に関しても、現在主流となっているタンパク質に加えて、ノンコーディング RNAを含む核酸に対しても広がりを見せています。このように、創薬研究においては、現在大きなパラダイムシフトが起こっている段階であり、今後人工知能技術を含む情報科学の適用が今以上に活発になされていくものと考えられます。さらに、医学研究においても、人工知能技術の積極的な活用が進んでおり、AI 医療による診断のサポートなどが、実用化に近い段階まで到達しています。

以上のとおり、生命科学研究・医薬学研究は、現在大きな転換期を迎えています。このような中では、バイオインフォマティクスによるアプローチは今以上に重要性を増していくことが予想されます。さらに、バイオインフォマティクスが関わる研究領域は、生命科学・医薬学のみならず、物理学、化学、農学、環境学、数学・数理科学、情報科学など 様々な領域へと及んでいます。それにともない「バイオインフォマティクス」という言葉は、最近では中・高校生なども含めて幅広く知られるようになってきました。それだけ、 世の中に広く認識され、一般的になってきたことを示唆しているものと思われます。

令和3年の本大会では「次世代の生命科学・医薬学を切り拓くバイオインフォマティクス」というテーマを掲げて開催します。「次世代」の生命科学・薬医学研究へのパラダイ ム・シフトが進んでいる中で、バイオインフォマティクスの果たす役割について参加者とともに議論していければと思っております。そのため、例年と同様に、大学、研究機関、民間企業、医療機関など、さまざまな立場の参加者が議論することができるセッションを数多く用意し、異なる視点の融合によって、新しいアイディアを創生できる場となるように、関係者一同で尽力する所存です。また、オンライン学会の良さを活かした企画も複数検討していく予定です。さらに、当該分野に対する若手の参入を促進するために、今回の年会では一般の参加費を下げ、学部生および会員の大学院生の参加費を無料にする予定です。バイオインフォマティクスおよびその関連する分野に関心を持つ多くの方々に、ぜひご参加およびご支援をお願いできますと幸いです。

大会長 浜田 道昭